相続手続きのポイント

相続手続きのポイント


手続きは結構複雑です。専門家(税理士、弁護士等)を早めに決めて相談しながら進めるようにしてください


相続は誰でもそう多くを経験することではありませんので、不安や戸惑いが生じているのではないでしょうか。

相続手続きについては民法、税金に関しては相続税法で詳細に定められており、それに基づいて手続きを行います。

ここでは手続きの概要と日程の概略を説明しますが、相当複雑であり、期限が定められている事項もありますので、早い時期に専門家(主に税理士、弁護士等)を選び委任し相談しながら進めることをお勧めします。

 
〇遺言書の有無を確認

〇お通夜・お葬式の領収書、支払の記録と保管

〇債務が多い場合は、早急に資産と負債の概算を算出して対策を講じる必要があります。

〇戸籍謄本による相続人の確認


◆お通夜.お葬式での税務

〇お通夜、お葬式の費用は相続税を計算する上で相続財産から控除されますので記録、保存は大切に。

〇お寺さんへの支払いは領収書を貰うようにしてください。

不可能な場合はお寺の名前、住所、電話番号、支払日、支払金額を記録しておくことが大切です。

〇49日法要、墓石購入費等は控除されません。

〇香典は税金がかかりません。

◆遺言書の有無を確認してください。

〇遺言の有無によりその後の相続手続きが変わります。

〇遺言書は家庭裁判所での検認が必要です。勝手に開封すると罰せられます。
(自筆遺言書の取扱いが変わりました。詳細は民法改正欄をご覧ください)

〇公正証書遺言は公証役場で保管されています。

〇遺言執行者が指定されている場合は、遺言執行者が遺言を執行します。

〇遺言書が無い場合は相続人全員の合意により遺産分割をおこない、遺産分割協議書を作成し、それに基づき分割をします。 

相続手続きの流れ


相続手続きの詳細は以下をご覧ください。
手続きによっては期限があることに注意しましょう。


相続財産のなかで債務が多い場合は必要に応じて次の手続きが取れます。

相続の放棄

〇相続人は相続を放棄する事が出来ます。
〇相続放棄は相続人の一人が単独で行う事が出来ます。
〇相続開始3か月以内に家庭裁判所へ届け出が必要です。
〇相続放棄は相続人内の取り扱いであり、銀行等の債権者に対する債務が消滅するものではありません。

限定承認

〇相続財産の内、財産の範囲の金額までの債務を相続することを限定承認といいます。
〇相続人全員で相続開始3か月以内に家庭裁判所へ届け出る事が必要です。
〇税務面で複雑な取り扱いがあり、実務面ではほとんど行われていません。

準確定申告

〇被相続人のその年の1月1日から死亡日までの申告所得、消費税がある方は所轄税務署に準確定申告を提出する必要があります。

相続人の確定

相続人範囲は民法に定められており、具体的には下表「誰が相続人になるか」の通りですが、相続人であること、他に相続人が居ない事の立証は被相続人の戸籍謄本を遡及(生誕から死亡まで)取得して行います。被相続人の履歴にもよりますが、戸籍謄本の遡及取得には相当の時間を要する場合があります。まれに思わぬ相続人の出現等がある場合もありますので早めに準備をすることが必要です。 

下表・「誰が相続人になるか」で確認してください。
〇相続人は現在の戸籍謄本が必要になります。
〇相続税上相続人になれる養子は、すでに養子がいる場合は
1人、その他の場合は2名までです。
〇養子・養子に出した人。非嫡出子も相続人になります。
〇胎児は出産した時点で相続人になります。
〇家庭裁判所に手続きをして、特別代理人、納税管理人を選定する必要がある相続人。
・未成年者
・知的障害者
・海外在住者
・行方不明者
 

誰が相続人になるか




相続分とは

相続分とは民法の規定で各相続人が取得できる相続割合の事で、分割の基準になります。
ただし、相続人全員の合意があれば相続分とは違う分割を行う事は可能です。

〇遺言書が無い場合の各相続人の民法で定めた相続割合です。
相続割合は、下図・法定相続人の組合せ・法定相続分をご覧ください。
〇非嫡出子の相続分は嫡出子と同額です。


 法定相続人の組合せ・法定相続分  

●子には孫など、兄弟姉妹には甥・姪の代襲相続人を含む。
●両親ともに死亡している場合、祖父母を含む。
●子、親、兄弟姉妹など、同順位の相続人が複数いる場合は、人数で均等に割る。
●半血(異父母)の兄弟姉妹の相続分は、全血の兄弟姉妹の相続分の1/2となる。

◆遺留分
遺留分とは、最低でもこれだけ貰えるという権利を民法上の定めで、配偶者と直属の親族に認められています。相続分の1/2の金額です。例えば遺言書に子の一人に相続額が0とした場合、遺言書は有効ですが、その子が遺留分を侵されたと裁判を起こす事ができます。遺留分とはそういう性格を持ったものです。
(2019年7月1日から一部改正があります。)

相続財産の調査と確認

税務署が一番目を光らせているところです。
時間をかけて正確な財産目録を作成する事が必要です。
 

相続財産の調査と確認は最も重要な相続手続きのひとつです。
昔は相続財産の一部を隠しても・・・という習性みたいなものがありましたが、ス-パ-コンピュ-タ-で税務デ-タが管理されている時代です。ユメユメ甘い考えは持たないでください。

〇被相続人以外の名義の資産であっても相続財産に認定されるものがあります。(特に名義預金、名義株式)
〇海外所有資産も相続税の対象になります。
〇相続財産はすべて登記簿謄本、金融機関等の残高証明書、契約書等で存在と評価金額を証明する事が必要です。

民法上と相続税法では相続財産の範囲が違う

民法上の相続財産
過去に相続人にされた贈与は特別利益として、遺産分割の対象になります。

相続税法上の相続財産
特別利益の概念はありませんが、つぎの資産が相続税の対象になり、民法の概念より範囲が広くなります。

みなし相続財産
生命保険金、退職金、生命保険契約に関する権利
名義資産とされた、被相続人以外の名義の預貯金等の資産
相続開始前3年以内の贈与
相続時精算課税を適用した贈与等があります。

 

相続財産の評価

原則的に税理士の業務ですが、以下に評価方法の概略を記します。
評価の原則は相続開始時の時価ですが実務的には国税庁が規定する「財産評価基本通達」によります。
評価で最も重要なのが土地の評価です。

〇土地については都市部は路線価、それ以外の土地は固定資産評価額を基に評価します。
土地は路線価を基に、立地条件、地型、利用状況、将来の都市計画の有無等を勘案して評価します。税理士の力量が問われる部分になります。

〇銀行預金や銀行からの借入金、その他の金融資産は相続開始日の残高証明書で確認します。

〇投資有価証券は相続開始前3か月間で一番低い価額で評価。

〇過去3年間の贈与の有無について実務では、被相続人と相続人全員の過去3年分の預金通帳を見て判断します。

〇その他、契約書、覚書、メモなどにより相続財産の有無と金額評価を行います。

〇自分の会社の株式評価は直近のバランスシ-トを時価に置き換えて評価します。

遺産分割の方法と注意点

相続手続きにおいて最も重要な事項です。
分割がスム-ズに行くか否かが相続を決めます。
相続人間の譲り合い精神と、分割を纏める意思が特に必要です。

相続人各個人が、それぞれどの遺産を相続するかを具体的に決めることです。

〇遺言書がある場合
遺言書に基づき各相続人への分割を行います。
ただし、相続人全員の同意がある場合は、遺言書とは違う分割も可能です。

〇遺言書が無い場合
相続人全員の合意によって分割を行います。

分割が確定すると「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員が署名、実印で押印します。
遺産分割協議書は相続税申告が期限内に出来るよう纏めてください。万一不可能な場合は下記のようなデメリットが生じます。

注意点
〇民法上の遺産と相続税法上の遺産に相違があるため、その調整が必要になります。

〇不動産の共有は将来に禍根を残します。避けるようにしましょう。
〇金融機関等からの負債がある場合は、債権者の同意の元で負担者を決める必要があります。
〇分割の仕方によって相続税に相違が生じます。税務面で有利な方法は専門家に相談する事が一番です。


〇2020年4月1日から配偶者短期居住権が新設されます
配偶者が相続開始時に被相続人が所有する建物に住んでいた場合に、終身または一定期間、その建物を無償で使用することが出来る権利が設けられました。

〇税務面では二次相続も考慮した分割をお勧めします。
二次相続とは両親の内二人目の相続を言います。(一般的には最初にお父さんが亡くなった時が一次相続、次にお母さんが亡くなった時を二次相続といいます。)
一次相続では配偶者の税額軽減の特例があり、相続税負担額は少なくなりますが、二次相続では税負担は高くなります。一次相続を目一杯税額を圧縮しても二次相続で高負担になってしまう場合があります。二次相続をシミュレーションして分割をすることも税務面では重要です。

分割協議が期限内にまとまらない場合のデメリット

余計な納税資金が生じます。相続人間の協調で期限内にまとめる努力を


〇相続税の納付期限(相続開始後10ヶ月)までに分割協議が纏まらないと相続税申告時に余分な税金の負担が生じます。

〇相続税には、小規模宅地の評価減、配偶者の税額軽減などの税負担を軽減する特例がありますが、これらの特例を受ける事が出来ません。(分割成立後に更正の請求を行う事により納付過大分の還付を受けられますが、余分な時間と費用が発生します。)

 

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